2005/02/06(日) 荒島岳ホワイトアウトの結末は・・・人騒がせな遭難未遂事件 メンバー:単独 形態:山スキー登高 |
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ドンドン標高を上げます。新雪ですが、このあたりの雪は決して軽くはなくスキーに絡みついてトレース上を歩いていてもかなり疲れてきました。おっと、そういえばスキーシールにワックス塗るの忘れてた!! 滑らんはずだな・・・しかし、もうすぐ、シャクナゲ平だろうからこのまま進むことにする。天気は今一つですが時々朝日も差し込み奇麗な樹氷が心をいやしてくれます。しかし足は正直パンパンです! |
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ザックを背負っていないことがこんなに楽なことか!と思うほど速いペースで進みます。ガスは濃いですが視界は確保できています。モチガ壁も難なくクリアーし稜線上にでると斜度も緩み、後は稜線右寄りそってに登れば山頂のはずです。高度計上1380m地点で山スキーヤーが降りてくるところに出くわせました。立ち止まって話をし、私もスキーできたが、途中でデポしたこと、彼のラッセルの後を拝借したことに礼を言った。彼はこのうえの1410m地点でガスがひどくなったため、そこから滑降してきたとのことだ。私はもう少し上まで頑張ってみると告げ彼と別れた。比較的緩やかな斜面は、徐々に空と雪面のコントラストが無くなり始めチョットヤバイかなと思うが・・・視界は30m位は有りまだ進んでゆく・・1ヶ所急登が有りこの斜面を上がったところ高度計上1430m地点で、やや左に方向を変え、さらに50m位登ると山頂です。 |
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山頂と思われる場所に来ました。足下を見ると山頂祠と思われる屋根を発見しました。雪を崩し、屋根を確認し写真を撮って直ちに退散です。今来た登路方向を振り返ると風が粉雪を巻き上げ、登りよりは明らかに視界も悪く、ゴーグルも凍り始め視界は悪いです。仕方なくゴーグルも外し眼鏡を拭きながら、今付けてきたツボ足トレースを忠実に拾います。時々足跡が無くなり、また元に戻って、更に探すという作業をしながら下降してゆきます。私以外には誰も山頂には来ていないので、足跡は私だけです。しっかり後を追えば降りられるはずなのですが・・・ |
ゆっくりと足跡を拾い下降してきたのだが、風とともに雪が巻き上げられ、たちまち視界はゼロになる。数分もするとまた視界は利くのだが、有効視界は5m程度になってきた・・・つまり足下が何とか見える程度だ・・・まずいな、トレース見逃したら終わりだな・・・と思っていたら案の定ツボ足が無くなってしまった。また元来た方向に戻りゆっくり下降するが見当たらない。高度計上1430m。もう少し下降すれば先程のスキーヤーのトレースがあったことを確認しているので、ツボ足よりは発見しやすいだろうと考え、もう少し下降する。1400mちょうどまで来たがやはりトレースは一向に見当たらない。もう一度今来た足跡に沿って登りかえす。1450mまで戻り再度下降。やっぱり無いな・・・チョット焦る・・・もう一度1450mまで戻り今度は少し左右に直行して歩いてみる。やっぱり見当たらないな。視界はこの時1m・・・足下がほとんど見えない。動き回って汗をかいてその蒸気で眼鏡ゴーグルとも凍りつき更に視界は狭い・・・まずいな・・・やや左斜面沿いに下降していたが、右方向に下降したほうが善いな・・・しかしどこまでが稜線か全く区別が出来ない。空と雪面が一体化し完全にホワイトアウトだ。ガスが飛ぶまで待つしかない。焦りながらも絶対方角を変えないように、体の向きを保ち続ける。寒いな・・そういえばジャケットの下は肌着一枚だ。来ているものは山ジャケットと長袖下着の2枚だけ・・・全てのジッパーをきっちり閉め、体温が逃げないように頑張る。風は強いがびゅーびゅー・・と言うほどではない。このままガスが飛ばなければ状況はかなり過酷だな。ビバーク道具を全てデポしてしまうといった、浅はかな行為に自分自身呆れてしまう・・停滞してから約40分、焦りが募る・・・1時間経過・・・ガスは晴れない・・・どこを向いても真っ白な世界が広がるだけ・・・ 下から登ってくる登山者なんかいるわけもないのだが・・・その時かすかにカメラのフラッシュの様なものが光った気がした。そして、”おーい”と言うような声が聞こえたような気がした。”誰か来たのか?”このガスの中を・・・?物好きか?救助者か?同じような道迷いか?・・・・じっと目を凝らしたが誰も来ない・・・当たり前のことだが・・・ひょっとして幻なのか?・・・急に自分のおかれた立場がかなりまずいことを再認識する・・・どうしよう・・このままでは下山は不能・・・・今ここにいることを誰かに連絡しなければいけないが・・・家族・職場・知人・・誰に連絡してもかなりパニックになる可能性がある。自分の体力は大丈夫だが、ビバーク道具はない。手元にあるのはストック二本だけ!!なんともならない・・・自力下山を前提に取りあえずの連絡先・・・やはり地元警察か?・・・・と思いかなり迷いながら携帯電話をポケットからだし、アンテナマークが2本立っていることにほっと一安心。冷えてくるとすぐに電圧ダウン・圏外マーク!!正直この瞬間は生きた心地がしなかった・・・もう一度体温で携帯を暖め電源を入れすかさず、・・・110・・・・”福井県警本部です”・・・この声を聞いた瞬間自分がとんでもなく情けなく遭難状態にあることが悲しかった。”荒島岳でホワイトアウトして道迷いです”1時間くらい頑張っていますがルートが見つかりません。もう一度だけ登り返して、何とかみつけてみますので、一応連絡だけしておきます。救助要請ではありません。ルートに戻り次第すぐに連絡します。もし1時間して連絡が無ければ・・・・・○○市から来た○○です。○○才です・・・もう恥も外聞も無い状況になった・・・しかたあるまい、装備を入れたザックも無いんじゃ、このまま死ぬしかないな。とにかく鉄則どうり、登り返そう・・・1480m地点まで上ってもう一度・・・そして、こわごわ左手にある雪庇のように見えるところへ近づいてみる。雪庇ではない。1ヶ所だけ斜面の大きく発達したシュカプラが切り崩してあるところがある。これだ、登路でわざわざわかるように故意に切り崩した跡だ・・・そうかここで右手に斜面を急下降するところを登ったのだ。ここは雪庇に見えるため下山時は左に除けていったのだ。そのまま左に降りたら断崖絶壁・・一貫の終わりだったはずだ・・・助かった。少しのぞき込むとしっかりとしたツボ足トレースがガスの中に浮かんだ・・・県警に再度連絡だ!ルートが見つかりました・・・安全地帯まで降りたらもう一度連絡します。深いツボ足のためガスっていてももう見逃さないぞ・・・・モチガ壁の急傾斜を滑落しないようにやり過ごし、・・・1回のみ滑ったが途中で停止した・・・何とか12時30分にシャクナゲ平でスキーとザックを回収した・・・ |
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モチガ壁を下りてようやくガスは少なくなり先程の出来事は一体ナンだったのか・・・と思う雰囲気である。周囲を取り囲むモンスター群が何か恐ろしい雰囲気を醸し出しているが先程の恐怖から考えれば大したことはない。シャクナゲ平におり、ザックとスキーを回収しこのザックがあればもッと冷静になれたはずなのに・・・致命的なミスであった・・・・さあ県警に安全地帯に来たことを連絡だ・・・・”シャクナゲ平につきましたもう大丈夫です。これからスキーで下山します””きおつけて降りてきてください””念のため大野署の隊員とと山岳警備隊員が向かいますので・・・駐車場で待機しますので・・・””申し訳ありませんでした・・・”あとはシャクナゲ平からスキーで滑走るだけなのだが、精神的にも身体的にも消耗していたためなかなかまともに滑れない。疎林帯ではあるが・・・・ゆっくりとしか降りれない・・・途中で何度か県警から携帯に電話が入る。”大丈夫ですか””とりあえず下の駐車場で大野署の生活安全課の隊員が待ってますのでゆっくり降りてきてください”3回くらい電話があっただろうか・・・その度にあわてて止まらなければならないので、これもストレスになった。狭い樹林帯をすり抜けようとした時に、小さな木に引っ掛かり左足膝をヒットした!ぶつかる瞬間に体を転倒させたため激しくはぶつからなかったのだが、左膝挫傷受傷。痛みはあるが折れてはいない。しっかりと足も動くし関節の可動は良好・触った感じも皿が割れている感じではない。意気消沈してまた立ち上がりゆっくりと降りる。そして今度は・・・1000m地点まで降りたところで尾根上右寄り斜面にスキートレースがありさらにその2m右寄りの新雪に斜面に乗った途端・・・・ |
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バシッという音とともに体がスッと下に流れた。雪庇崩落だっとわかった・・・どすんとすさまじい音とともに(鈍く響き渡る、恐怖心をあおるには十分すぎる音であった)からだが空を見上げる形でスキーが雪面に刺さった格好で止まった。右側には崩れた雪隗があり動くとさらに崩落するのだろうか??いや樹林が右手にあるからこれ以上は落ちないはずだ・・・しかしスキーが刺さって身動きができない。まずはストックでビンディングをリリースし、万が一崩れた時に捕まれるようにスキーを崩落した左手の雪面に突き刺ししっかりと手につかんでゆっくりと起き上がった・・・崩落したたかさはさほどではないが、崩れた斜面は上れない・・・比較的浅い雪のところまでトラバースし腹までのラッセルでもとの位置に戻った・・・振り返ると10mに渡って、ブロック崩壊状に雪面が落ちており・・これがあのドスンという音を生じたのだ、よくぞ雪に埋まらなかった・・・亀裂の間に体が落ち込んだため難を逃れたのだ・・・・次から次へと降りかかる恐怖の連続。もう十分死んだ気分であった・・・・ |
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この後はもうスキーを履く気力は消失し、手にスキーをもってツボ足で降りることにした・・13時10分スキー場上部に戻った。このあたりは天気は良くとても先ほどのガスの状態は想像出来ない。楽しそうにボーダー・スキーヤーが滑っている。山をなめ過ぎていたな・・・ あとはスキー場斜面を滑って行くのである・・・13時20分駐車地点に戻り、連絡のごとく県警の方が出迎えてくれた・・・ |
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大目玉を食らうだろうな〜・・・と内心ビクビクしていたが”ご苦労さん”意外な言葉であった。”まずは荷物をおいて楽にして”どこでどうなったの”モチガ壁の上の稜線部分は、山頂から降りてくると左の方が広いため左に迷いやすいんだよね・・・山頂まで行ったの?とかいろいろ質問を受けた。”朝何時に出たの””やっぱ2人以上で来てね””ビーコンは必ずもってね・・・でも雪に埋まったら15分が限界だから・・・そうなったら助からないよ””スキートラーブかいい板だね!”意外な優しいの言葉と指導・忠告に、私はスミマセン・スミマセンを連呼するしかなかったのはいうまでも無い。 |
せめてGPSでも持っていればこんなに恐怖にかられることは無かったかも・・・1400m地点で引き返すべきだった・・・と反省するしかない。自分の命は自分で守る・・・何とか自力下山出来たが、やはりもっと冷静に考えれば今回のような連絡も必要なかったのかも知れない・・・いや1番いけないのは過信して気象状況を判断していなかった自分が一番悪かった・・・もっと謙虚になれ・・という宣告と受け止めよう。福井県警・大野署生活安全課(山岳警備隊)の2名の隊員様と県警の皆さま・・・申し訳ありませんでした。 かなり眠たい目をこすりながら東海北陸道を帰ってきた(異常に眠たくかなり疲労していたのだろう)・・・岐阜は暑いくらいにいい天気であった。こんな日にあの山の上は・・・やっぱり想像出来ないな。 難を逃れた一つの要因・・・知人から直前にもらった厄払いの節分の豆を出発前に全部食べたからかも知れない・・・などと思いながら・・・ |
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