【No.17】【日時】2007/05/(日)
優美な笠ケ岳に似合わない穴毛谷・・・陰鬱な印象ですがその名のいわれは笑っちゃいけない○○○(^-^;)
【山域・山名】岐阜県 北ア南部 抜戸岳2813m
【コース】新穂高〜穴毛谷〜杓子平〜抜戸岳
【山行形態】山スキー/日帰り/ピークハント・ピストン
【メンバー】篠崎純一氏(L)、操 潤
【累積標高差】1940m(GPS)【水平移動距離】15.3km
【行動時間】約9時間05分
【天候】曇り〜2000m付近で雨〜2500m付近で霰〜2800m稜線強風・高曇り。下山時に
晴れ間がのぞく。【私的お勧め度】滑走快楽度★☆:景観★★☆、滑走難度★★★:登高難度:★★★  
(※☆〜★〜★★★:三つ星評価;天候・雪質の状態で滑走・登高難度は変わります)

【序 章】穴毛谷・・・名前を聞くだけで山スキーヤーにはあまりよい印象は与えない。北アルプス南部の主稜線からもっとも離れており冬期の入山者も少ない笠ケ岳の優美な姿からは想像できない険悪な谷を形成している。過去に幾多の大雪崩を引き起こし、最近も4名の山スキーヤーを飲み込んだ陰うつな谷である。しかし、古くから山スキーヤーには親しまれた場所であるのも確かな事実である。入山に際しては時期を的確に見抜く力が要求され、それから先に進むのも引き返すのもすべては個々の判断に任されるのはどの山でも同様だが、ことこの穴毛谷は一旦事故があれば”あそこに入るなんて”と地元民から後ろ指を指されかねないので十分な注意が必要です。


日曜早朝3時(山行当日)・・・不眠症気味のわたしは、PCの電源を入れ篠崎氏のHPを見ていた。篠崎氏は本来は前夜土曜日に単独で穴毛谷から入山の予定とのことを聞いていたのだが、彼も人の子・・ハードなGW山行のせいで脳内アドレナリンが枯渇したとのことで好天の土曜日の山は中断した・・・との記載があった。”ふ〜〜んそうか〜〜”だったら今日は体力あまってるだろうから誘ってみようかな〜〜と・・・早朝3時に迷惑ながらも携帯に連絡を入れてみたのである。10コールで電話に出る事はなかったので、一旦切った。しかしすぐその後・・・今度は篠崎さんから電話がかかってきたのだ!(これは相当な職業病かな?すぐに電話のレスポンスである。24時間戦えますか?の世界である。山も仕事も24時間体制なのだろう)

(操)夜分すみません・・・先生が昨日の穴が中止したのを見たのでもしよかったらなんですけど〜〜中アの宝剣ルンゼに滑走トレーニング行きませんか?多分天気はいいですよ。ロープウェイを使ったアンチョコですけど・・・

(篠崎氏)エエいいですよ・・・中アですね。と二つ返事で千畳敷ロープウェイの始発時間8時に麓に集合として電話を切った。

さっそく慌てて準備を・・・しようと思った矢先篠崎氏から電話・・・あの〜・・もしよかったら穴毛谷行きませんか!!

(操)キタ〜〜〜ッ!穴毛谷か〜〜2年前に途中敗退した場所で、それ以来事故が多くて評判も良くないので避けてはいたのだが・・・でも私もお調子者!エエいいですよ。中アはいつでも行けるし。これから頑張っても8時くらいになるけどいいですか?
こんなやり取りで急遽!(こんな計画でいいのかよ〜〜)というくらい突然の穴毛谷の山行決定したのでした。

これから岐阜から車を飛ばし新穂で待ち合わせ。頑張れば2.5時間で何とかイケルかな〜〜。さっそく夜中に一旦職場へ足を運び皆さまの状態が落ち着いている事を確認し荷物を積み込み出発!!!(4時30分に岐阜市内を出て6時に高山にいた自分もこの落ち着きの無さ・・ドウかな〜〜〜)山にかける情熱なのか現実逃避なのか・・・・

篠崎さんも私も・・・穴毛谷には途中敗退という過去??があるだけに何とかしてピークを目指したいのは以前からの計画でもあったのだ。でも今日の天候や、これから出発といった時間では笠ケ岳は困難であろう。抜戸岳を目標に、メンバーそれぞれリベンジをもくろむことになる
さあ、このリベンジは成功したのでしょうか?

言わずと知れたシンプルな穴毛谷。谷に沿ってただ登り詰めるだけなんのだが。しかし私は2回目にもかかわらず、四ノ沢を合わせる場所でデブリに惑わされ本谷からそれてこの四ノ沢に入り込んでしまい、篠崎氏に修正を促されてしまった。この辺は十分な注意が必要。一人じゃなくてよかった・・・

快楽曲線

なかなか手ごわい堰堤越えと兼用靴でのガレ場歩行・渡渉・雪割れの処理・そしてデブリランド・落石の回避・・・様々な障害が行く手を阻み山スキーでのバリエーションに近い場所かも知れない。でも、的確な時期を選べば比較的楽に突破できるのである。スリルを楽しみながら滑走することが多く豪快滑走とは言えないかも知れない。上部杓子平がメインバーンと言える。

堰堤上部のガレ。上流深くまで人工の手が入っているのも不思議なものだ

7:00 新穂有料駐車場発
7:20 穴毛谷堰堤取り付き。最終堰堤までは雪はほとんど着いていなく暫くガレ沢を遡行。

徒渉ポイント。的確なルートを選び・・・エイヤッ

徒渉ポイントを越えてしばらくでようやく雪がつながります。堅い雪面ゆえツボ足で通します。この後穴毛大滝上部まではツボ足としました。杓子平手前の斜面で雪が緩んできたため、スキー歩行に切り替えました。

8:20 11400-1500m地点でようやく雪が繋がる。つぼ足歩行。前方に単独行発見。おそらく四ノ沢を登っていったためかなりのエクスとリーマーなのだろう。後で確認したが四ノ沢?五ノ沢?滑走のシュプールあり。

デブリランド(帰路撮影)

大滝上部ザイテンタールをツボ足で登るの図

9:36 穴毛大滝通過
10:00 ザイテンタールから左へトラバースし杓子平下部へ

2500-2600m杓子平にて。かなり不安定な天候で深いガスと雨とあられ・・・気分は超ブルーモードで笑顔は・・・当然ありません

 このあたりから雨がぽつぽつ、視界不良・・・2人で顔を見合わせ・・・もう止め
る??でもお互い決して言葉には出さない。
時々ガスが飛び視界回復。・・・もう少し詰め上がることにする。決して敗退癖はつけないようにしようと誓う(操)、でも本当はモチベーション下がりっぱなしで辞めようと思っていたらしい(篠崎氏後談)

でも急にガスが飛んだりもする・・・振り返ると意外に急な斜面である。この下が穴毛大滝上部、六の沢の出合になります。

巨大雪庇の切れ目・・・ここを突破しよう(滑走後撮影)意外に緩やかに見えるが、実際は・・・・手ごわい斜度であった

あい変わらずガス〜雨〜霰の繰返しで2600m杓子平へ。ここで正面に巨大雪庇の稜線群がガスの切れ間に浮かぶ・・・ヤバイ突破できない・・・かなり大きな3mくらいの飛び出した雪庇の砦に唖然。でももう少し頑張りましょうとはっぱをかける(操)
でも少しだけ雪庇の切れ目がある。行くしかないでしょう!後悔しないように・・・

稜線突破に向けてツボ足に切り替え。雪庇の切れ目上部より見下ろし撮影。臨場感は今一つ伝わりにくいですね

12:20 スキーを手に持ちつぼ足で何とか最後45度〜の壁を登り稜線へ。篠崎氏:スキー担ぎでアイゼンピッケルで突破。

ここまで来ると篠崎氏はピークハンターの血が騒ぎ、当然ピークを目指します!やや強い風の吹く稜線を抜戸岳へ颯爽と歩いてゆく。ほんの10分も歩くと抜戸岳山頂です(笠山頂は厚いガスに囲まれほんの少し顔を見せただけ。さすがに笠を狙う時間は残っていない)

山頂でようやく笑顔

笠ケ岳山頂は今回は遠かった・・・また課題が残ってしまったが今年のコンディションはそんなに甘くはないのでしょう。

雪庇からの急斜面エントリー。最初の一歩がなかなか怖い!気合いを込めて・・・トイヤ〜〜の掛け声とともに!GO(トイヤー!なんて叫んだかな??)

詳しくはここが面白い!

13:00 抜戸岳山頂。亀裂の入った稜線雪庇が恐ろしい・・
13:05 シールをはがして滑走開始。稜線はクラストの片流れ斜面。慎重に行く。
13:10 雪庇切れ目からダイブ!降り口は一瞬50度。その後は40度のクラスト斜面が30mその後35度くらいの斜面となり安全圏へ・・・杓子平はハードパック〜モナカ。

杓子平のモナカ雪滑走の図

杓子平全景。このときがいちばん明るく晴れ渡ってくれた。この後再びガスが覆う。こんな広大な光景が穴毛谷の上部に広がっているなんて想像できませんが、この雪がズリズリ滑り出すと・・・あの大雪崩になるのです

杓子下部はザラメ。穴毛大滝からザイテンタールへ、ここは緩んだザラメで快適!

14:25 穴毛大滝を通過

水量は結構多い穴毛大滝

穴毛大滝付近で明るい空に笑顔

吸い込まれる様な急峻な谷の険悪な様子はここならでは。危険地帯は一気にいきたいがデブリに阻まれること頻回!四ノ沢の尾根上にエクストリームなラインのシュプールが一条・・・ただ者ではない

幾多のデブリの山を越えて・・・もうすぐ安全地帯。

四ノ沢〜三ノ沢から下部は、デブリランドで苦労。何とか雪を繋ぎ・・・・

安全地帯に入ると目の前に焼岳が・・・焼岳はすでに初夏のようだった

15:00 最終堰堤
16:00 新穂駐車場着

お疲れ様でした・・・陰鬱で山スキーヤーを何人も飲み込む穴毛谷・・・初めての時は単独で天候悪化で2600mで敗退。笠山頂を残してしまいましたが今日の天候と時間配分では、十分な成果だったと思います。下山途中に・・・”ガスと雨の杓子平・・あそこであきらめなくてよかった〜〜”とお互い顔を見合わせ満面の笑みでありました。何とかお互いの思いを成し遂げらたようです。

ところで穴毛谷の名前の由来を知っていますか?もちろん新穂高から左俣林道を歩いたことのある人は知っているとは思いますが・・・・

印象は暗い穴毛谷・・・そのいわれは婦人団体からクレームがつくかも知れないな〜〜なんて”ここの専門の先生”と大笑いしながら、今日一日を無事に終えることが出来ました!!

その後はお約束の温泉:平湯バスターミナル:錫杖の湯(600円)と・・・高山市内国道41号線沿い:蕎麦正 せと で蕎麦をいたただきのんびり帰ることとした。

2007年の山行日記一覧に戻る

トップページに戻る