【日時】2008/03/02(日)
ああ野麦・・・遥に続く白い世界。そしてあれが朴の木の灯だよ、おっかさん・・・(おとっつゃんかな?)
剣ケ峰3026mと乗鞍連山南北縦断ワンデイロングツアー
【山 域】岐阜県 乗鞍連山 
【コース】野麦集落〜野麦オートビレッジキャンプ場〜神立ノ尾根〜剣が峰〜肩の小屋〜摩利支天/富士見岳のコル〜畳平〜乗スカ〜猫岳・四ツ岳のコル下〜牛首〜朴の木平スキー場(この後デポ車を回収しに野麦集落へ・・・)
【場 所】 乗鞍剣ケ峰3026m
【累積標高差】 約2900m、最高到達点:3026m、【行動時間】12時間30分【水平移動距離】約27km(いずれもGPSデータ)
【メンバー】篠崎氏、操
【天気】晴れ、山頂直下で風強し
【装備】操:サロモンX-Wing 、ガルモント、ディアミール、篠崎氏:アトミックディラン、タルガ、スカルパ
【私的お勧め度】滑走快楽度★★☆:景観★★★、登高難度:★★★ 
(※☆〜★〜★★★:三つ星評価;天候・雪質の状態で滑走・登高難度は変わります)
行動概要

【標高差】約2900m、

【最高到達点】3026m

【行動時間】13時間


【水平移動距離】約27km

(いずれもGPSデータより)


今シーズン2月後半になってまとまった積雪で乗鞍南面も期待できる。少し前から(思いつきで?)温めてきたビッグルートに挑戦だ。もちろん飛騨の山を歩き回るDr山スキーこと篠崎さんととタッグを組む。目指すルートは野麦集落起点〜剣が峰〜乗スカ〜牛首〜朴の木の乗鞍南北縦断ロングツアールートである。過去に二人とも単独でではあるが南面や北面などをいろいろ探索しておりその集大成の一つとしてワンデイにこだわって挑戦してみました。こだわりというよりは二人とも連休がとれず。もし連休がとれたとしても一日のうちに半日は必ず携帯範囲内に居ないといけないジレンマがそうさせるのか・・・

5:15  1200m 野麦集落出発

6:00  1400m オートビレッジキャンプ場から神立ノ尾根へ

9:30  2300m 森林限界上。がちがちのアイスバーンと強風。山頂が踏めるのか?:篠崎氏某社製品のスキーベース取り付け型クトーがボルトごと脱落し10m滑落。操:クトーでトラバース中に5m滑落。かろうじて岩に当らずに済んだ・・・ここでアイゼン歩行に切り替え山頂までスキー担ぎとした。

11:00 強風に耐えスキー担ぎで揺さぶられながら、大日岳直下の広大斜面を登り上げる。最後の50mがなかなか足が上がらない。

12:45  3026m 剣が峰山頂。なんとか着いた!!予定の12時を少し回ってしまたが、このままロングツアーに突入を決める。ここから肩の小屋に向かって滑り降りたらもう後には引けない。このときは風も弱く天候良好で救われたが。どの斜面もがちがちアイス。篠崎氏は朝日岳/剣が峰のコルまでアイゼン下降。操:根性で山頂からスキー滑走。なんとか転倒せず下降。

13:15 肩の小屋から左方向にトラバース気味に回り込み2800mから摩利支天と富士見岳のコルにつぼ足で登り返し。 

14:00 摩利支天と富士見岳のコル着。ここから畳平に向かってがちがちに凍りついたスカイライン滑走だが以外にも傾斜が弱く滑らない。

14:15 畳平着。誰もいない厳冬の乗スカ を滑る、われらおっちゃん軍団。後ろから見ているとかなりスペクタクルな光景でした。

15:00 四ツ岳取り付きの沢状斜面の直下。ここからはるか眼下の朴の木平を目指す。操…ここからは未体験のルートで、その大変さを後になって実感することとなろうとは・・・ディープパウダーでウハウハ斜面ですが、睡眠1時間で突入してしまいもう気力が限界となり、とにかく木にぶつからないように下りるしかなかったのが悔しい・・・牛首のコル前後は急斜面の尾根でまたもや操・・ルートミスで崖に入り込んで、かろう
じてトラバースで脱出。

16:00〜17:00 牛首のコル前後…操:疲労の極限であまり覚えていません。

17:45 朴ノ木平スキー場トップ。日没でピステンが地ならし中。怪しいおじさんたちはヘッデンでゲレンデは元気にカービングターン・テレターン滑走で締めくくる。

18:00 朴ノ木平スキー場下到着。・・・・・13時間のほぼ厳冬期のコンディションのロングツアーを何とか終えました。操:へべれけに疲れて立ち上がれません・・篠崎氏:充実感に満ち溢れた余裕の笑顔・…さすが、飛騨の地で日夜トレーニングをしている成果か…始終脚をひっぱてしまい申し訳ありませんでした。

早朝5時15分野麦集落に操車をデポし出発。まずはキャンプ場まで2.5kmの林道歩行。最初からずっとシールで歩けます。

キャンプ場にさしかかるころ空は明るみが・・・このときはまだ山頂方向は厚くガスで覆われている

キャンプ場から御嶽

御嶽も山麓のスキー場でズタズタ・・・これが人間の感性・・・(右:チャオスキー場、左:マイヤスキー場)

ひたすら厳しいラッセルの樹林帯。雪はやや重く、昼にはもっと大変だろう。南面はやはり厳しいコンディションになり易いので時期の見極めが大切

ようやく頭上に展望が開けた。気分は一気に開放されるがやや風が強く、不安もよぎる。風雪舞う森林限界。山頂は踏めるのか?風は・・・

タダひたすら根性の人。

果てしない戦いはまだこれから幕を開けたばかり

厳冬の2500mラインを越える

きびしい風が吹き荒れる

振り返ると御嶽が見守ってくれている。この直下で実は二人とも滑落していたのだ。しかもやや距離を開けていて、お互いはその時の状況を見ていなかった。この辺は多いに反省・・・

徐々に山頂が大きく近づく。右剣ケ峰。左大日岳。

最後の50mはかなり息が切れてきた。剣ケ峰は厳冬期に3回目だが、スキーを山頂まで担ぎ上げたのは私も篠さんも始めてであった。何とかここまで来た・・・目標は12時山頂だったが、やや遅れて12時40分・・・ここからが本日のスタートなのだ。一旦、岐阜県平湯側に滑り出せばもう片道分の燃料のみの特攻体制だ・・・さあ決断は。

当然GO!である。私はガリガリにクラストした山頂から岩の間をかいくぐり絶対滑落しないように慎重に滑走。かなりビビリが入ったが、スキーソールもガリガリとなった・・・・

写真は剣ケ峰から下った朝日岳とのコルから朝日岳。篠さんもここから滑走

肩の小屋が見下ろせる、ここが鞍部。雪面はクラスト〜堅いシュカプラで決して快適滑走では無いが、山岳スキーの醍醐味を感じる凄まじいシチュエーションだ

篠さんGO!

ハードシュカプラは厳しい

肩の小屋から少し左:位が原方面へトラバースし、その付近から見上げ。剣ケ峰トップから右2番目の鞍部が朝日岳のコル。剣ケ峰山頂から滑走してきたのだな〜

篠さんのクトーが破損したため、ツボ足で摩利支天と富士見岳の鞍部まで登り上げた。軽いツボ足ラッセルだったが、篠さんはさすがに元々はアルピニストだ。ガンガンツボ足ラッセルする。スキーラッセルよりも速いのではないか??

鞍部ここからいよいよスカイライン滑走開始。全く状況が読めないが何とか突破できそうか。このとき14時。

コロナ観測所の立つ摩利支天

畳平までは緩い傾斜と向かい風のためなかなかスピードが乗らないが約15分で着。さすがスキーの機動力

夏に自転車で登ればきつい乗スカも、向かい風で押し戻される緩い傾斜・・・スケーティングするが体力も消耗がち

至る所が白一色の世界だった。夏の乗鞍はあまり来ないが冬ならまた来てもいいかな・・・こんな我々はやはり変わり者かな〜

とにかく前に進むしかない。もう我々に残された時間は限られているのだ。目にものを見せてやる!と自分を叱咤激励する

それでも振り返れば凄まじい光景が我々を包んでした。立ち止まりがちになってしまうのも致し方ない

猫岳・四ツ岳が乗鞍山スキーで有名だが、この周辺一帯はどこもがすごい山スキーエリアだ。アクセスは厳しいがある意味立山以上のスキー好適地かも知れない

15時過ぎにようやく遥眼下に目指す、朴ノ木平スキー場が・・・

おっかさん、あれが朴ノ木だよ・・遥かなたの野麦の地から、とうとう帰ってきたよ・・・・・

このときはまだ簡単に帰れると操は思っていた・・・・本当の苦難はここからだったのだ

この後はディープpowderの牛首コースだが複雑な地形とフラットから緩い登り返しのトラバースがあり、私的にはハードな状況に追い込まれてきた・・・前日1〜2時間の睡眠で突入してしまった私は、やや意識朦朧となってきて、足が踏ん張れない。もう気力で降りるしかない。滑りを楽しむ余裕は無し。篠さんは元気に下ってゆくが・・・・・
この間私は低血糖様症状も手伝い、最後は気力だけだった・・・あまり写真もないし記憶もないがちょっとした集中力の欠如で崖トラバースをしたりと自分でもあきれるほどの情けなさ・・・

そしてサンセットゴール・・・朴ノ木平スキー場ゲレンデベース着18時15分。出発から13時間後のことであった。

お疲れさまでした・・・意外にまだ元気だった、篠さん。笑みさえみうけらます・・・(◎_◎)

厳しい一日だったが、この企画は1ヶ月ほど前に何気なく私が”乗鞍南北縦断しませんか〜”と言い出しっぺのような気がします。篠さんもいいですね〜〜と二言返事。実際に二人で十分な研究もせずぶっつけ本番の状態でありました。多分出来るんじゃない?といった半ば直感的な感じでした。これで今シーズンの目玉の一つを成せました。まだほかにも隠し球があるのかな・・・(こわっ!!)

長い長いロングワンデイ乗鞍南北縦走が終わりました。この後、朴ノ木平スキー場内の宿儺の湯でさっぱりした後、篠さんの車の中で仮眠させてもらいながら、野麦集落まで車を回収しに、約1時間のドライブです・・・
野麦で荷物を詰め替えて健闘を讚えあった後、二人のおっちゃんは帰路につくのでした。そして操・・・自宅着は深夜1時過ぎでした。でも興奮のせいかエンドルフィンバンバンのせいか熟睡できず2時間の睡眠の後、仕事に向かうのでした

根性の人:決してあきらめない篠崎さんの気迫に満ちたHPへもGO!!

【注】本コースは危険度の高いコースです。十分な情報と判断が要求されますことを付け加えておきます。ここでの情報は筆者の主観によるものでありガイドの役目ではないことをご了承ください。山で生じた不利益はすべて本人の自己責任のもとでの行動に負うことをご理解ください。

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