【日時】2008/05/04(日)

三度目の正直の奥穂高直登ルンゼ滑走・・・でも循環器医のくせに睡眠一時間で登ってはいけません×××

【山名】奥穂高岳 3190m
【山域】北アルプス南部
【コース】新穂高温泉〜白出沢〜白出のコル〜奥穂高山頂〜直登ルンゼ滑走〜2800m付近から登りかえし〜白出のコル(往復)
【日時】2008年05月04日(日)
【メンバー】篠崎純一氏、操 潤 
【装備】操:FISCHER X-PEDITION150cm、ディアミール、ガルモント、篠崎氏:アトミックシュガーダディー、スカルパ
【天気】快晴
【行動時間】12時間15分
【累積標高差】約2300-2400m
【水平移動距離】約22km
【私的お勧め度】滑走快楽度★★★★:景観★★★★、登高難度:★★★ 
(※☆〜★〜★★★:三つ星評価;天候・雪質の状態で滑走・登高難度は変わります)
行動概要

いつぞやからか・・・・奥穂高直登ルンゼという言葉を知った。一般ハイカー上がりの私には雪稜や雪壁などやるチャンスもなかった。故にこの言葉を知ったのは某山スキーのガイド本にこの直登ルンゼの光景が目にした時だった。

昨年は白馬二号雪渓・毛勝南峰ルンゼなど急斜面系にも少し目覚めてしまった。実は昨年のGWに一回、5月中旬に2回目の奥穂を目指したのだが、最初はGWの降雪・奥穂登りの大渋滞で撤退。2回目は低温ガスのガリガリアイスバーン・・撤退だった。今年は必ずチャンスを物に・・・を合言葉で篠崎さんと虎視眈々とチャンスを窺う。そしてGW後半5月4日天気図はピッタリ高気圧を示した。ならば、もう行くしかないでしょう・・

私は前日友人と会う用事が有り、滋賀県と三重県付近をうろうろしており、朝10時に出かけて、途中で名古屋の駅前アルプスで今回のために一応バイルを買ったりして、そのあと友人との用事をこなし自宅に帰ってきたのが夜10時!!用意したら11時、待ち合わせは早朝4時!ギリギリの状態で、あわててド高くなったハイオクガソリンを入れて出発。途中でさすがに高速で眠くなりSAで1時間仮眠し新穂高に向かった・・・・

滋賀三重愛知岐阜〜新穂高と2日間での車の連続走行500kmでの山行・・・究極の寝不足山行になってしまった・・・・・アホである

篠崎さんは篠崎さんで前日に上高地から岳沢経由で前穂高山頂からの滑走を堪能するという何だか取り憑かれてしまった状態でもう誰にも止められない状況です・・・どこからそんなに元気が出るのか、何が何だかさっぱり??判りません。 今がもっとも脂が乗っている時期といえば聞こえはよろしいでしょうか?ちなみにワンシーズンで穂高連峰3000m級の峰々をすべて登ったのはこの人くらいではないでしょうか・・・きっとこの記録は岳人掲載モノだな・・・・


全体図・直登ルンゼ前後の拡大図








 
新穂高温泉駐車場 4:00AM
穂高平 4:49
白出沢 5:49
大滝巻きの下部 7:00
荷継沢 7:54
白出のコル 10:19
奥穂高山頂 11:30
直登ルンゼ滑走開始 12:00
2900m付近 11:00
白出のコル 13:20
荷継沢 14:11
白出沢出合 14:50
新穂高温泉駐車場 16:20
帰宅職場復帰 22:00

定石通り新穂高いちばん奥の有料駐車場に止めて少しでも負担を減らす。許してね!自転車は使わず(操には自転車を積む時間の余裕は全くなかった・・・)行きから既に高速で眠くてフラフラ途中で1時間ちょっとだけ寝たが、今日はかなり困難ルートゆえ先行き心配・・・新穂高では今すぐにでも出発できるような状態で篠崎さんが待機・・・ひえ〜〜〜休む余裕無いよ〜とりあえずゆっくりと右俣林道を歩きだす。いつも通りのペースで歩く。白出し沢出合には1時間40分で到着。ここで雪が繋がったため、シール歩行開始。白出大滝巻きまではシール歩行で飛ばす。ここまでは操は快調・・・大滝巻きでここからは堅い雪面ゆえスキー担ぎでアイゼンのまま進む。篠崎さんはツボ足が得意・・先頭でガンガン登る・・徐々に操は遅れる。2600mで心配していた高度障害が出はじめる。眠気強い・・・頑張ってコルまで上がるが、なかなか頭がすっきりしない。とりあえず少しでも軽くなるように不要なものを穂高小屋前にデポ。雪壁はダブルアックスでゆく。渋滞は少しあるがタイミングを見て取りつく。操は足が上がらない・・・息が弾む・・眠い苦しい・・・高度障害の嵐。睡眠不足はかなり危険だ・・・慣れているとはいえ、この後、ルンゼ滑降で涸沢ザイテングラードを登りかえしは、かなりつらい。でもあきらめれば、もう今シーズンはチャンスは無いかも・・・とにかくゆっくり頑張ろう。息が弾んだが山頂には11時30分着。新穂高出発4:00だから7時間30分。体調不良の割にはまずまず・・・山頂からルンゼをのぞき込んだら俄然元気が出てきた!!素晴らしい斜面である!おまけにノートラックである。先着した先行の3人山スキーパーティーがいるので彼らにファーストトラックは譲らねばならないが・・・のぞき込んで滑走ラインを考えるがやはりスタンダードにトラバースから入りターンをするのが順当か・・・

記念写真や登山者との歓談・・・登山者からはこんな事を聴かれた・・・・

こんなふうにのぞき込んでドロップポイントを探すのか〜

いつもこんなとこ滑るの?とか、

死にそうになったことない?・・・・とか、

まあ・・・いろいろ怖いこともあるよね〜〜〜いつもこんなとこ滑ってませんよ・・・たまにね・・・・

さて多くのギャラリーに囲まれるのは山スキーの中ではそんなに多くはない。さすがGWの奥穂高だ。20名くらいの大ギャラリーがひそひそ話ですごいな〜とか、どうやって滑るのとか・・・

先行者はかなりの強者っぽい雰囲気で、滑走は見事なジャンプターで降りていった。見ていた我ら懲りない軍団もすげ〜〜かっこいい!!と感動。さて我々は・・・まあ、みっともなくない程度に無難に降りてみた!といった感じのややショボイ滑りm(_ _)mとなってしまったが、今日の体調ではまずまずかな〜〜・・・息が弾んで足が、がくがくするよ・・・恐らく酸素飽和度はかなり低下して90%以下は間違いないかな。後半の斜面もなかなか気が抜けない斜度で特に雪が強烈に重くなり、後からズルズル雪崩れは出るし縦溝がひどく、そこをジャンプでこなしながら降りてゆく・・・ルンゼコンディションはあまりよくないほうだと思うが・・・・それでも三回目にしてようやく念願の奥穂高岳直登ルンゼを滑ることが出来て幸せでいっぱいだ。出来るならもっとよい体とルンゼのコンディションでリトライしてみたい・・・・ちょっと贅沢?かなり贅沢??

さてこの後は、白出しのコルまで、きつい登り返し・・・・・・・・・・・・・

朝の白出沢下部。気温がどんどん上昇してくる。雪崩れが怖い。この先温暖化でもっとひどい雪の状態になったり、雪すら着かなくなるの何も知れない・・・

先週登った笠ケ岳・・・雪はどんどん融けている。明らかに岩肌が目立ってきている。こうやって一日一日、あっと言う間に雪は消えるのだな〜

白出のコル着・・・渋滞必至の北アの原宿? コル着10:19

間違い尾根からジャンダルム。いつ見ても絵になるカッコ良さ

前穂高・・・昨日篠さんはあそこに!!

奥穂山頂から直登ルンゼ斜面を覗く。

とうとう来たぜ直ルンへ・・ルンルン!

むかし2000年ごろ、普通にGWに穂高に登っていたときにはこのルンゼを滑るなんて行為すら知らなかったし、山スキーすら自分の中の概念に無かったのだが・・いつからか概念が変わってしまった・・・

ルンゼ観察編2

滑り出しは45度、全体に湾曲して受けておりすぐ手前下に小さなガレがあるが頭からコケなければ激突はないと思う。2号雪渓の方が出だしで下が見えないので恐怖感は高かったが、こういったルンゼは先人達が幾度となく滑っているので、まず、普通に滑れば危険性はないと思う。雪さえ緩んでいればですけどね。もう十分に雪はかなり緩んできている。そんなに恐怖は感じないが、体調不良で足が踏ん張れるかどうか自信がない。登り返しも考えるとさらに憂うつだが・・もう行くッきゃ無いよ!!

ルンゼ観察編3。

出だしはギャラリーがいっぱい。雪は多く今日はノートラック。イメージではこのエントリーポイントはもっと低いような気がしていましたが・

ギャラリーにいろいろ聞かれて恥ずかしい。今まで死にそうになったことはないの?とか、いつもこんなとこ滑るの?とか・・・

いえいえたまにですよ・・・毎回こんな事やってたらもう死んでますよ〜

山頂の祠に手をかざしてお祈り・・・穂高よ僕を守ってね・・・

滑走に関しては動画編をごらんください

http://korinaiojin.blog.so-net.ne.jp/2008-05-04

テレマークの篠崎さんは山頂祠右からエントリー

中間部安全地帯へ・・・前穂が高く見えるようになった。このあたりは雪がグサグサで、ゆっくり流れる雪崩れ頻発・・・高温過ぎる気象状況・・・温暖化は実感できるな〜

この後は標高2800mまで滑り込みコルまで200mくらいの登り返し。この200mのきつかったこと・・・息切れ・ふらつき・こんな状態で山行をしてはいけません犯罪に近いです。半分肺水腫になっていたんじゃなかろうかと思うほど。あんたは循環器医でしょ・・・止めときなさいそんな無謀なこと・・確かにそうかも・・・かなり反省。

写真向こうは登り帰し地点か見た、北穂高、北穂沢。ここもオープンな広大急斜面。余裕があれば定着で楽しみたい場所である。一人のスキーヤーが滑っていた・・・・

白出沢の斜面もデブリが融けて滑らかなうっとり斜面となった!!これは滑りがいあり!!大声を掛けて一気に頂きましょう!!

ここでも多くのギャラリーに見守られこっぱずかしい(^.^;)

ジャンダルムよさようなら・・・・下部のデブリに耐えながら頑張って帰りましょ・・・
思ったとうりの豪快なシチュエーションの中の直登ルンゼ滑走だったが、ここを日帰りで、”さらっと”やるのは、やはりそれなりの体調管理は必要・・・さらりとこなす人たちはある意味普通じゃない・・・・滑りは少し(かなり)しょぼかったが、ギャラリーの皆さまからは暖かい拍手をくれたのがちょっと嬉しかった。さすがは登山者の原宿:穂高岳でした。

温泉は・・・新穂高ひがくの湯:700円とちと高い。この後渋滞につかまらないように一般国道を走るが眠くて途中で寝てしまった。

帰ったら10時で職場に戻って入院患者さんの診察・・・・厳しい一日だ。明日もこの入院患者さんは目が離せない。状態が悪ければこれにて私のGWはTHE END!! (T_T)

【注】本コースは危険度の高いコースです。十分な情報と判断が要求されますことを付け加えておきます。ここでの情報は筆者の主観によるものでありガイドの役目ではないことをご了承ください。山で生じた不利益はすべて本人の自己責任のもとでの行動に負うことをご理解ください。

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