2006/3/5(日) 厳冬の乗鞍:岐阜県民であれば岐阜県野麦側から乗鞍を目指せ!!
岐阜県高山市:野麦集落〜野麦ノ森尾根経由剣ヶ峰3026m日帰り滑降

乗鞍の岐阜県側:野麦集落から取り付くクラシックルートをたどってみました。クラシック・・・とは言うものの、このエリアの報告は少なく、自分としてもぜひこのエリアから乗鞍最高点を目指してみたいと思っていました。やはり、岐阜県民・・・”ああ野麦・・”のフレーズが気になるのです。

【メンバー】:単独(名古屋ACC所属)
【累積標高差】1947m(SUUNTO Vector Data)
【最高到達点】:乗鞍剣ケ峰3026m
【総行動時間】:9時間3分。
【登り】;6時間15分、【下り】2時間32分(ルートロストで30分の登り返しを含む)
【装備】:Garmont Gride Gfit、Fisher X-pedition 150cm、 ディアミールXP

Prologe:前日土曜日・・・仕事中に急患・救急受診そして外来・・・金曜日からずっと忙しい日々が続き、ほとんど眠れずの日々であった。土曜日は仕事が終わったのが8時過ぎ。帰ってからどうしようか、山に行くか?おとなしく寝ているか・・・やっぱ山でしょう。仕事が忙しくなればなるほど山への願望がましてくる困った奴である。今週末は高気圧が張り出してきており絶好の山日和のはず!!北側の平湯側へ行けば今年最後のパウダー滑降が楽しめるだろう・・・しかし、これ以上時期を遅らせるとこの南面は雪がグサグサとなろう。冷えた翌日の晴れ・・こんなチャンスを逃す手は無い!急いで準備をし、ほぼ睡眠無しで突入。出発11時15分。と、いうことで今日は乗鞍を岐阜県側の南面から目指す。やはり岐阜県民である以上は平湯側からではなく、野麦集落側からロングアプローチで臨むのがベストか!(平湯側も岐阜県なので別にここがイカンというわけではないですけどね・・・あまりにもありきたりかな〜〜)
野麦集落に着いたのが深夜3時30分。出発は4時30分の予定。日曜日ははどうしても夕方には職場に戻り診療を行わなければならない。携帯で呼び出されたり、時間に間に合わなければ途中でリターンを覚悟で突入である!最近寝ていなのが災いして、車中仮眠で5時になってしまった('_;) 。しょうがない5時30分に準備を整え、満天の星に見送られながらヘッデンで出発。もう3月ともなると5時30分にはうっすらと明るみを帯びてくる。すぐにヘッデン無しでも歩行できるようになった。

まずは全くトレースの無い林道を(これを期待していたのだがしっかり目論見どおりである)淡々と進む。本日は登り約8-9kmの長丁場のため、最軽量の装備とし、スキーもおニューのFISCHER X-Pedition 150cm を持ち込んだ。ビンデイング込みでもかなり軽い。本日が初使用である。さあ150cmの軽量スキーの出来はいかに?少し柔らかすぎて頼りなさそうだが、まあ、大丈夫でしょう。

林道を2-3km進み適当に右手尾根の斜面に取りつく。すぐに乗鞍全貌が視界に入る。まだまだ遠い・・・とにかくルートは単純であり、地図通りに尾根筋の左手斜面をトラバース気味に進む。白樺の疎林から、針葉樹のやや濃い樹林に入る。傾斜はやや急である。雪はクラスト斜面に10cmの新雪で登りはスリップしやすい。クトーを併用し直登気味に登る。

白樺の疎林を抜けしばらくは尾根左の斜面をトラバース気味に進む。2回の上り下りで今度はシラビソなどの針葉樹林帯に出る。所々に切り開きの広い場所があり、気分が良い場所だ。

2200m位から疎林となり広い斜面にでる。これから上部はいよいよ森林限界だ。2500-3000mまでは無木立の吹きっさらしである。何とかこの好天が一日もって欲しい。森林限界上でのホワイトアウトだけはごめんだ。3月とは言え北アの一角の3000m峰である。斜面は徐々にクラストからブルーアイスのガチガチの氷に被われている場所もある。油断は禁物・・・緩斜面でもスリップしたら止まらない。

背後に御嶽山・・・始終御嶽に見送られながら登路をゆく。槍穂連峰とは違ったすそ野を広げた雄大な景観である。

2500mくらいから生あくびと眠気・・・さらに息切れ感・・・まずい、睡眠不足で高度障害気味になってきた! 高度障害はこれで3回目だ。いつも寝不足と2500mが鬼門。出来るだけゆっくりのペースに落とす。まだ頭痛は無いし、吐き気も無い。軽度の高度障害だろう。今日は敗退など絶対にありえない覚悟でゆっくりと雪原を進む。しかし、ここで倒れてもだれにも発見されないだろう。

2500m付近から右:剣ケ峰、左:大日岳・・・この光景を見てしまったらいやがおうにも進むしかないだろう

平湯側はオーソドックスで入山者は極めて多いが、さすがに野麦側からはだれも登っていない。ひたすら大雪原を単独で進む。感慨深いものがある。この大雪原にたった一人でピークを目指す。他に誰もいないのである。山スキーの醍醐味である。

振り返ると、御嶽の大展望。この山も山スキーの格好の山である。

2800m地点:風は顔をたたきウインドクラスト・ブルーアイス・軽いラッセルとどんどん雪質が変化する。目の前にはただ白い斜面のみ。何もかもが白いベールに包まれている。こんな所でガスに巻かれたらやばいだろうとびびる。今日は何とか天気は持ちそうだ。

剣ケ峰と鞍部を挟んで対当する大日岳

2900m地点:剣が峰と大日岳の鞍部手前・・・岐阜県側から烈風と粉雪が容赦なく顔をたたく。3000mちょうどの鞍部にスキーをデポ。さすがに剣ケ峰山頂まではスキーは持ち上げてもしょうがなさそうだ。(後からよく見てみると東面は滑降可能ようだが、今回の雪質は氷板の上に新雪であり雪崩が怖いので止めといてよかった・・ことにした)剣が峰山頂まで20-30m弱。最後の凍った岩峰に取りつく・・・紛雪で視界が悪くどこかな取りつくのか??色々とルートをトライするがスリップ転落即アウト!な場所もある。ザイルは・・・6mmの細引きでは不安。軽量ピッケルでは歯が立たないところもある。アイゼン装着しもう一度ルートを確認する。どうも右手の斜面から雪面を直登出来そうだがさらさらの雪でスリップしたらかなり落ちそうだ。やはり出来るだけしっかりした岩の間を登ることにする。結果としては、しっかりルートを選べばそんなに難しくはない登りでした。

慎重に岩場を通過しひょこりと山頂祠の前に出た11時40分であった。出発が5時30分だから6時間と10分である。かなり途中でペースダウンした割には予定よりは30分早く到着した。烈風吹く山頂でウォ〜〜〜・・・と雄叫びをあげて登頂の喜びを全身で表現していた自分がいた!登ってしまえば今までの苦労は吹き飛んで気分はハイに・・・

3月1週・北ア南部ではあるがやはりそこは3000m峰・・そう易々とは登頂させてくれなかったが、この時期最高のコンディションではなかっただろうか?こんなチャンスは逃す手は無い。頑張ってここまで来て本当に良かった・・・穏やかな感じのようですが風が・・・

眼下には肩の小屋、コロナ観測所、遥か向こうには笠ケ岳の秀麗な姿

さすがは北アの3000m峰である。岩は堅い雪と氷に覆われそう易々とは山頂に迎えてはくれなかった

さあ、後は滑降である。デポ地まで注意深くアイゼン下行した。スキーシールを剥がしている最中に一本のスキーが烈風で飛んで行ってしまう・・・ヒエ〜〜〜・・・と思ったがすぐ30m位下で止まっていた。ホット胸をなでツボ足で取りに行く。無事スキーを回収しセット完了。滑走開始。2900-2500mまでは全くの無木立の広大な斜面。ややクラスト気味だが快適斜面。ショートターンより大きく豪快にターンを刻もう!!アイス斜面も急斜面ではないので助かった。十石山の10倍以上はあろうかという大斜面である。2500mからはややモナカとなりスピードを控えるが2回ほど転倒した。樹林帯はかなり雪質が変化しなかなか手ごわい。やはり南斜面であるがゆえであろう。木に衝突しないよう注意しながらツリーラン。アッという間に林道に戻ってきた。ここまでわずか1時間ちょっとであった。


このあたり斜度はないが雪質がよくそこそこスキーはよく走ってくれた。


快適なツリーラン

しかし、途中で林道が分岐しておりここをミスルートし、気がついた時は全く違う谷川に降りていた勢い余って行けるだろうとガレ斜面を滑ってしまった・・・しかしGPSは確実にルートを補足していてくれたため、すぐに正しい進路が判明した。しょうがなく今降りてしまったガレ斜面をスキーを担ぎツボで50m程登り何とか最初の林道にでた。ほっとした!!GPS様々であった。
後は全くのフラットな林道をまるで高速道路のような感じで、一気に滑降し無事駐車地点に復帰した。本当にきれいな雪面の高速林道でした!!特筆すべきは滑降距離の長さである。3000mから駐車地1300mまで標高差1700mの一気滑りです。体力・技術があれば連続滑降で山頂から1時間以内で下山できるでしょう。途中で2ヶ所担ぎでツボ足がありましたがわずか20-30m程度の登りです。

2:30 駐車地点にぴったり到着

温泉は・・・塩沢温泉七峰館:入浴500円。単純ナトリウム泉

この時期の3000m峰に単独で登頂できたことは極めて嬉しい。しかも、平湯側からではなく、野麦集落からなので喜びもひとしおである。もちろん平湯側から剣が峰本峰を狙うのは日帰りではかなり困難であろう。このコースも最初はかなり困難なルートと考えていたが、ルートは極めてシンプルで、滑走範囲も広く平湯側の猫岳・大崩山周辺よりは遥かに眺望・斜度など変化に富んだツアー性の高い、好ルートであるとも思う。急斜面やパウダー好きの人には南斜面でもあるので期待できませんが、ワンデイのツアーコースとしての存在価値は素晴らしいと思います。平湯側からの猫岳・四つ岳・大崩山に飽きた方、剣ケ峰を目指したい方、この野麦側はまた新たな乗鞍の良さが再認識できます、乗鞍北面に飽きた皆さん是非是非・・・

下山後、一目散に帰ろうと思ったが、塩沢温泉七峰館の看板に誘われ、温泉に入った後、全速力(法定速度の2倍超??)で職場に戻り、夜7時の診察に間にも合い大満足の一日であった・・・・頑張って登ってよかった、ただ感無量でした。

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