2006/05/04(木)
2006年GW第二段:
根性と忍耐あるのみ・・新穂高〜白出〜涸沢〜天狗原〜槍〜新穂高のワンデイ周回耐久コース
岐阜県・長野県:新穂高〜白出沢〜白出のコル〜涸沢カール〜横尾本谷右俣〜天狗原〜槍沢〜槍の肩〜飛騨沢〜新穂高
【メンバー】:操 単独(名古屋ACC所属)
【累積標高差】約3000m超・周回距離30km超
【最高到達点】:槍の肩3000m
【総行動時間】:16時間30分(始発午前1時39分〜終着午後18時50分)・・・・・あれ?17時間超じゃないですか?5月8日修正!!
【装備】Garmont G-ride G-fit、FISCHER X-PEDITION 150cm、 ディアミールEXP

かねてから計画していた過酷なワンデイツアーにいざ。この計画は当初GW前半の4月30日に決行予定であった。しかし新穂高に到着し準備を整え出発した矢先、デジカメを車の中に忘れ、取りに帰ろうとしたら、雨が降ってきた・・・だんだん雨足は強くなり、ありゃりゃ・・・この気象状況だと、全層雪崩・ブロック崩壊が起こるかも〜〜と危険を察知しすかさず中止し、朝7時まで仮眠し起きても小雨・・結局、新穂高から岐阜へ舞い戻り、その日はそのまま、さらに観光〜ドライブで一日をのんびりと過ごしたというわけでした・・・そしてリベンジは決して忘れずこの日を迎えた・・・しかし前日3日に急遽、御嶽山(継子岳ままこだけ)でのシュート滑走を行い少し疲労した状況での山行となった・・・

ちなみにこのコースは過去にも沢山の方が行っていると思います。今回は金沢の板坂さん高山の篠崎さんのレポートを参考にしました。板坂さん、篠崎さん・・この場をお借りして謝辞を申し上げます。

概念図をみただけでもぞっとしてしまう・・・こんな山行をワンデイでやってしまう人がいるのには正直驚く。そしてそれをみてやってみようと思う自分もたいそうタチが悪い!山スキーを駆使したハイスピードな山行がどこまで可能か?絶対ツボではできない山行を目指す・自分でもこんな山行をしてみたい・・・自分の可能性がどれ位あるのか?と思うようになった。出発前日に岐阜県の御岳山でヒト滑りしてきたので、足に来ないか心配になったがこんな天気を逃す手はない!!何も考えずに予定どうり突入である。

深夜1時39分。もたもたしていて出発予定より30分以上遅れてしまった。今回は雪が多く右俣林道もすぐに積雪が見られ、長時間行動に耐えるように最初はスニーカーで歩き、穂高平で靴を履き替える。雪がギタギタでとてもシール歩行は出来そうに無いし、第一シールがびしょびしょ・ごみだらけになってしまうので、結局この後白出しのコルまでツボのまま登ることになった。岩切付近より背後を笠ケ岳に見送られながら・・

白出は相当なデブリである。たまらない〜

深夜3時30分予定どおり2時間でに白出に到着。ここで同様の物好き発見!白出沢出合で後から結構なハイペースで歩いてくる単独行の方が追いついてきた。彼は飛騨沢ワンデイだという。わたしよりだいぶ後からの出発のようだが元気いっぱいの若者である(後から山スキーMLでメールがあり関西の山スキーヤーであったことがわかった)”あの山の向こうがわ”の管理人のよっちゃんさんでした。

私自身は積雪期は飛騨沢は登ったことがあるが白出は初めてである。そして今年の豪雪のためおそらく相当なデブリであろうことは容易に想像できる。真っ暗な白出に一人ヘッデンで、恐々、突入した・・・予想どうりいきなりすさまじいデブリである。真っ暗な中のデブリを階段のように一つづつ乗り超え進む。時に3mくらいのデブリの壁が立ちふさがる。まるで”ぬりかべ”に襲われるような感じ?気温の高くなる昼ならどこからでも雪崩が来てもおかしくない雰囲気である。いつもはヘルメットはしないが今回ばかりはずっとかぶりっぱなしの一日であった。ただひたすら石や岩が降ってこないように祈りながら突破してゆく・・・。

白出大滝巻き道登行中に笠ケ岳が美しくはえる

午前4時30分岩切道付近通過。
午前5時:もう明るくなってきた。白出大滝巻道で少し道迷い、少し急斜面のツボ足になったため瞬く間に体力が落ちる・・・不安になりながら進んだら無事ルート場に合流。確か荷継ぎ小屋跡の上にでたと思う。かすかな夏道の記憶で進んできた。その後は沢を間違えないように地図・GPSを確認して進む。遥か上方にコルに建つ穂高小屋が見える。ここからがなかなか近づかない、疲労が早くも出てきた。夏道では7時間以内で登っていたはずである。デブリのせいかもしれないし、前日に御岳での行動のせいかも・・・この後は最後まで体力は持つのか??いきなり心配になってきた・・・

白出も両サイドが深く切れ立っており雪崩の可能性が多い場所だ。速い時間帯に抜けるのがポイントだ。

コルを見上げる、ここからがまだ長い・・もうすでに息が切れ切れで情けない状況だ〜  先行き暗い・・・

苦しい登りに耐えながら予定より1時間遅れ・・・午前8時39分コルにでた。辺り一面は春山ジョイのようなすごい人で溢れかえっていた。最近の山スキーブームで何人かはスキーを担いでいるが、それでも少数派である。休むまもなく滑降準備をしていると色々な人が話かけてくる・・息が切れて話すのもイヤなのだが。直登ルンゼですか?単独?どこから来てどこから登った?とか色々聞かれた、これからどこへ?と聞くので新穂から来て槍経由で今日中に新穂に帰る!と答えておいた。(これは自分に対する決意を固めるためでもあった。)まわりの人は目がテンになっていたようだ・・・でもついでに記念写真を撮ってもらった。すぐ横でテレビクルーが春山登山のインタビューをしていたり、まさに穂高は渋谷並のごった返しである!!そして大きく深呼吸をして、胸の前で十字を切ってまっすぐ涸沢カールの斜面い飛び込む!最初のワンターンは軽くギルランデから入りすかさずショートターンに切り替える・・・奇麗にザラメ斜面にカービングが決まった・・!ヨッシャ!今日はもらいや〜〜!!大斜面に舞った自分は穂高のソムリエや〜〜(彦麻呂風に!)その後はぐんぐん高度を下げ、小豆沢の途中でスキーを背負った山スキーヤーがこっち見て手を振り、一瞬の意志の疎通・・・滑りながら手を高く上げて合図しながら滑走・・・



涸沢カールと奥穂高岳・・ああ本当は余力があれば山頂まで登りたいけど・・・

涸沢カール見上げ。聞くところによると昨日ダイレクトルンゼも2名ほど滑降した様子である

午前9時・・さあ準備完了。最高の雲一つ無い天候である。山にのめり込むきっかけとなった穂高・涸沢カールに初めてスキーで飛び込む瞬間である。まわりの人から気を付けて〜〜と励ましを受けながら、大斜面にエントリーした。最高の斜面とザラメであった。このコンデュションなら、直登ルンゼも出来たかも知れないな〜〜とルンゼの下見もかねて下部合流点から写真を撮った。遠くなりつつあるコルを時々振り返って下った。

あっという間のエクスタシー・・・もう体全身に電気が走ったようなそんなしびれた感じ・・・

涸沢ヒュッテで水を補給していると、滑ってくるのを見ていたというご夫婦に声をかけられ、なぜだか”勇気をもらいました!”と感動されてしまい、記念写真を・・・といわれはずかしながら引き受けた。これからどこへ・・・と聞かれ・・やはり同じように自分への決心を固めるために、日帰り周回だと答えておいた!ご夫婦に”あたなたら出来ますよきっと”と激励されて、がぜんやる気が出てきた!しかしすごい雪だな涸沢も・・・



横尾尾根本谷出合9時35分。右俣を地図で確認しシールを貼り登る。気温がどんどん上がってきて、雪が緩んでシールはいきなりべちゃべちゃ!先が思いやられる。デブリは少なく比較的雪崩は少なそうであるが、デブリが無いことが逆に問題で有る。今日それが落ちてくるかも・・少しびびりながら誰もいない静かな右俣を登る。さっきのにぎやかさが嘘のようだ。やはり息が切れ、足が重く40歩でヒト呼吸が限界となってきた、もう進しかない覚悟である・・・初心を貫くのみ!!



下から見上げると一人の登山者がコル上にいた。一般コース外では初めてのすれ違いだ。かなり苦しみながら天狗原手前のコルに登り上げる、そのあと1歩・・・かなりいやらしい傾斜の小雪庇を乗り超そうとした瞬間、足下がザザ〜と滑り滑落体制!!雪崩の恐怖というよりは、こんなに苦しんで登ったのに落ちてたまるか〜〜そんな気分でストックを思いっきり斜面に突き刺した!! 止まった。足がぶらりと流れた状態で今度はスキーを何とか斜面に刺してとりあえずは安定・・・上手くスキーを脱ぎ斜面に刺しながらツボで突破。コルでは先程の単独行の山スキーヤーが滑走準備中であった。ここは雪崩れるよ・・・ほらそこ!と教えておいた。彼は私が滑落状態であったことは彼は見ていなかったようだ!!と言うことは本当に雪崩れていたら助けはなかったということだよな・・・

滑降を見送りながらお互いに健闘を讚える

天狗原の滑走

お互いにこれからの健闘を讚え槍をバックに記念写真の交換をした。彼は槍沢〜天狗原〜本谷〜涸沢ルートだという。最高の天気であるがやはりどこが雪崩れておかしくなくなってきた。体力だけではなく雪崩の心配もしなければならず、かなり精神的にもピークになってきたが、槍を見た瞬間、再度進む決意を固めた!天狗原の広大な斜面に飛び込んだ

苦しい肩への登り・・・


出来るだけ高度を落としたくないが槍沢にはいる手前の小リッジがいかにも雪崩れそうなのであまり近づく気にもなれず、下降した。槍沢にはデブリも走っておりそれを乗り超えて槍沢2350mに合流した。

飛騨乗り越しから大喰岳

シールを貼りながら小休止・栄養補給。肩まであと650m。今日のコンディションなら2.5時間はかかりそうな感じ。今午後1時なので・・・3時過ぎるな・・・穂先は諦めムードである。時間的にも体力的にも厳しくなってきた。もし穂先へ行くと帰りは真っ暗だな〜。やはり今回はやむなくパスとした。とりあえず肩までどれくらい上がれるかによって決めよう。やはりかなり息が弾む、絶え絶えで登る・・・2600m付近で携帯が鳴った。電話をとり出し、出るのもおっくうな状況・・・聞けば”時間外で息が苦しいといっている患者さんがいますが・・・”とのことだ”こっちも息が苦しいいんだ!!””今日中に帰るから夜中に来てもらう!と伝えておけ”と訳の解らない理由で電話を切った・・そうとなったらやはり今日中に帰らなければならない! 此処で穂先は完全に諦め、ノービバークで必ず帰ることを目標にした。とりあえず肩まで・・・苦しんで肩に15時15分に上がった。

飛騨沢上部でシュプールを刻む

最高の天気でこれまたごった返しの槍ケ岳であった。水を確認し1リットル以上残りがあり補給無しでいけそうだ。簡単な行動食を口にし、最後の飛騨沢滑走体制にはいる。飛騨沢上部からもうほとんど誰もいない飛騨沢にシュプールを刻む。深夜に白出で出会った若者も此処を滑ったんだろう・・・とおもうと自分が今、ここを滑っていることが不思議だが、とうとうここまで来たんだ!!と感動を覚えながら、武者震いのような感覚が襲ってきた。昨年来た時より雪は安定しており、デブリも全く無く快適な飛騨沢滑降を楽しんだ。

飛騨沢下部

雪が重たくなってきたが問題なく滑走

16時ころ飛騨沢を登る山スキーヤー2名とすれ違った。物好きはこんな時間にもいたのか。あとは滝谷出合まではほとんど一直線で滑れてしまうほど雪が多く思いのほか、早く降りてきている。こんなに速いペースなら穂先も可能だったかもな〜と・・

白出出合いに戻ってきた。まだまだ余裕を見せようと口笛を吹くまね、ほんとはヘロヘロ

しかしあとは仕事場に日が変わる前に帰りたい白出し沢でスキーを担ぎ林道まで戻り此処からさらに林道を滑り穂高平でスニーカーを回収し、新穂高に18時50分無事に帰還した。

午後6時50分無事に駐車場に帰還しました。今回はできるだけ省エネ作戦のため、贅沢にも新穂高有料駐車場に止めてしまいました。6時間ごとに+500円加算でした。しめて2000円高いか安いか、少しでも近場は卑怯とか・・・まあ省エネ作戦なので・・・

そういえば新穂高に到着時に、車のバンパー下のアンダーカバーぶつけたことを思い出してガクッと力が落ちる・・・結構小心者である!!(新車でまだ2週間目なのだ〜〜)

本当に帰ってきたんだ・・・無事で良かった・・・あ〜温泉に入りたい・・・でも早く帰って仕事・・・とか色々な思いが浮かび落ち着かない。平湯湯ノ森はGWで満杯のため今日はこのまま帰ろう・・・かなり眠くなりながら、高速を飛ばし23時職場に顔を出し無事仕事もこなせた。基本スタンスである仕事が入れば夜中でも山から帰るという姿勢は貫けたのも満足であった。(きわどいタイミングでしたが・・・)
こうして一日プラス一日の2日間の私のGWは終了した。
標高差3000m超。今の自分の実力を考えれば、それを越えたかなり密度の濃い、エキサイティングかつストイックな山行ではあったが、今後の山に対するモチベーションはさらに上がり、自分の山に対する気持ちが再確認出来た。何よりも成せばなる、現場へいってみなけりゃわからない!である。適切な状況判断や耐える気持ちで乗り超えたことが自分自身の自信に繋がったそんな、意義ある山行であった。

ただし最近自覚したことは粘りは出ましたが、絶対的な体力は年々確実に落ちてきています!!('_;) ・・・と言うことです。

でも・・・帰ってからも、また、次の山に向かうことを考えている自分が少し怖くなった・・!

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